女子高生コンビニ店員あすか(3):悪友

土曜日のバイトを何回かこなし、コンビニバイトにもかなり慣れて来たところで、
最初の約束通り、平日深夜(22時~7時)のシフトにも入ることになった。

このときのパートナーは田中くん。


この田中くんが、なかなか癖の強い人物だった。

仕事はデキるし、新入りの僕にもすごくフランクに話してくれる、友達としてはとても良い人。

一方でズル賢くて若干のサボリ癖がある人だった。


そのコンビニでは、消費期限切れの廃棄商品を、休憩中に食べても良いことになっていた。
(本当はダメらしいが、店長が黙認してくれていた。)

ある日、田中くんが、「どれにしようかな~」と言いつつ、お弁当コーナーを眺めている。

「よし、これだ!」と言うと、おもむろに一つの弁当を、棚の奥の見えずらい場所に押し込んだ。

そう、自分の目を付けたお弁当が売れないように隠しておき、消費期限切れにして、自分で食べてしまうという手法である。

すごいことをする人がいるものだ、と、純真だった当時の僕は思った。

ルールを逸脱した行動なんて、僕は思い付きもしなかったし、思いついても絶対にヤレなかった。


また別のある日。

僕が家でのんびりしていると(その日はシフトに入っていない)、夜中に電話が掛かって来た。

田中くん「今からバイト手伝ってくれない?」


10分後には、僕は制服を着て、コンビニ内を立ち回っていた。

そのとき来店したお客は、「なぜかいつもより店員が多いな。」と思ったことだろう。

通常2人でする作業を3人でダラダラと行って、朝方、交代メンバーが来る前に、
僕は駄賃のハーゲンダッツを田中くんから受け取り、アパートに帰って行った。

※決してイジメられていたわけではなく、僕も楽しいからやっていた。


田中くんとはこんな人間だった。

「言われたことは絶対に守らなければならない」
「ルールから逸脱した行動をとってはいけない」

僕のクソ真面目で凝り固まった、つまらない価値観を壊すことになった最初のきっかけは、
田中くんかもしれない。


とにもかくにも、それなりに楽しいバイト生活を送っていた。


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