東大志望JKみさき(4):後の祭り
駒場祭の2日目。
僕は意気揚々と駒場キャンパスに向かった。
計画は完璧だ。
気を付けないといけないのは、名刺を渡すときにキョドらないこと。
「あ、あの。良かったらその。ここに連絡して。ほ、ほら時間足りなかったし、聞きたいことあったら相談に乗るよ。うへへ」
こんな風になっては目も当てられない。
あくまでもスマート、かつ爽やかに名刺を渡すこと。そこがポイントだ。
2日目も、初日と同じ段取りだった。
着席した僕のもとに、1人目の高校生がやって来る。
緊張の一瞬・・・。
顔を上げるとそこには、男子高校生の姿があった。
まあ仕方がない。もともと考えていた通り、東大を志望する高校生には男子の方が多いのだ。こんなことでいちいちショックを受けていては身が持たない。
僕は高校生の質問に親身に答えた。
そして終了の時間を迎え、高校生は席を立った。
男子高校生B「ありがとうございました!」
ひろし「うん、受験頑張ってね。」
僕は用意していた名刺を渡さなかった。当然だ。この大事な名刺は、男子高校生に切るカードではない。男子高校生からの質問で、家でのんびりゲームする時間を削られたくない。(←最低人間)
しかし、ここに来て初めて、嫌な予感がして来た。
(まてよ、そういえば2人とも男子高校生というケースは想定していなかったぞ。次も男子だったら、一体どうすれば良いんだ?)
そんなことを考えるのも束の間、入れ替わりの高校生の足音が聞こえてくる。
僕は下を向いて祈っていた。
(神よ・・・。どうか女子高生を・・・。)
高校生「よろしくお願いします!」
その声を聞いたとき、僕は悟った。
この声はどう考えても男だ。逆にこんな野太い声の女子高生がいたら、絶対にブスだ。
諦めの境地で顔を上げると、そこにいたのはやはり男子高校生・・・。即興の信仰心は神に届かなかったようだ。
ひろし「・・・っ。よろしくお願いします。」
一瞬戸惑ったものの、僕はすぐに持ち直し、これまた誠実に対応した。
ショックの色は全く見せなかった。たぶん見せなかったと思う。見せなかったんじゃないかな。ま、ちょっとは見せてても仕方ない。
相談が終わり、席を立つ高校生Cを僕は呆然と見送った。
ポケットに5枚のメアド入り名刺を忍ばせたまま、僕はしばらく動けなかった。
こうして、駒場祭を利用して女子高生と仲良くなるという、僕の不純な計画は失敗に終わった。
やはり初日に美少女女子高生が来たことが奇跡だったのだ。それを逃した時点で僕の敗北は決まっていた。
今さらそれを悔やんでも、まさに「後の祭り」だった・・・。
(完)
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