東大志望JKみさき(4):後の祭り

2020年5月19日

駒場祭の2日目。

僕は意気揚々と駒場キャンパスに向かった。

計画は完璧だ。

気を付けないといけないのは、名刺を渡すときにキョドらないこと。

「あ、あの。良かったらその。ここに連絡して。ほ、ほら時間足りなかったし、聞きたいことあったら相談に乗るよ。うへへ」

こんな風になっては目も当てられない。
あくまでもスマート、かつ爽やかに名刺を渡すこと。そこがポイントだ。

2日目も、初日と同じ段取りだった。

着席した僕のもとに、1人目の高校生がやって来る。

緊張の一瞬・・・。
顔を上げるとそこには、男子高校生の姿があった。

まあ仕方がない。もともと考えていた通り、東大を志望する高校生には男子の方が多いのだ。こんなことでいちいちショックを受けていては身が持たない。

僕は高校生の質問に親身に答えた。

そして終了の時間を迎え、高校生は席を立った。

男子高校生B「ありがとうございました!」

ひろし「うん、受験頑張ってね。」

僕は用意していた名刺を渡さなかった。当然だ。この大事な名刺は、男子高校生に切るカードではない。男子高校生からの質問で、家でのんびりゲームする時間を削られたくない。(←最低人間)

しかし、ここに来て初めて、嫌な予感がして来た。

(まてよ、そういえば2人とも男子高校生というケースは想定していなかったぞ。次も男子だったら、一体どうすれば良いんだ?)

そんなことを考えるのも束の間、入れ替わりの高校生の足音が聞こえてくる。

僕は下を向いて祈っていた。

(神よ・・・。どうか女子高生を・・・。)


高校生「よろしくお願いします!」

その声を聞いたとき、僕は悟った。

この声はどう考えても男だ。逆にこんな野太い声の女子高生がいたら、絶対にブスだ。

諦めの境地で顔を上げると、そこにいたのはやはり男子高校生・・・。即興の信仰心は神に届かなかったようだ。


ひろし「・・・っ。よろしくお願いします。」

一瞬戸惑ったものの、僕はすぐに持ち直し、これまた誠実に対応した。

ショックの色は全く見せなかった。たぶん見せなかったと思う。見せなかったんじゃないかな。ま、ちょっとは見せてても仕方ない。

相談が終わり、席を立つ高校生Cを僕は呆然と見送った。

ポケットに5枚のメアド入り名刺を忍ばせたまま、僕はしばらく動けなかった。

こうして、駒場祭を利用して女子高生と仲良くなるという、僕の不純な計画は失敗に終わった。

やはり初日に美少女女子高生が来たことが奇跡だったのだ。それを逃した時点で僕の敗北は決まっていた。

今さらそれを悔やんでも、まさに「後の祭り」だった・・・。

(完)


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