女子大生マネージャーさくら(23):漏れ出た本音
この日はひさしぶりの再会で話題が豊富にあったためか、はたまた、小食でも恥ずかしくないように予防線を張ったことが功を奏したのか、さくらさんと比較的スムーズに話が出来た。
僕はお肉を焼く合間にお酒を飲み、さくらさんはひたすらお肉を食べるという流れの中で、色んな会話をした。
ちなみに昔から、焼肉のときに肉を焼くのは僕の役目。合コンの帝王の指導の賜物だ。
気になっていた、シュラスコバイトの彼氏の話も聞けた。
どうやら、つい最近別れたらしい。ちょうど1ヶ月前がさくらさんの誕生日だったのだが、その段階で既に、険悪な関係になっていたそうだ。
「誕生日祝いとして事前に予約していたディナーデートが地獄だった」と、さくらさんは笑った。
さくらさんほどかわいい女性と付き合えているのに喧嘩したり、険悪な空気になったりするものなのか。なんて贅沢な男なんだ、と、恋愛経験のほとんどない当時の僕には不思議だった。
食費がかかりすぎて嫌になったのだろうか・・・?
いやいや。ギャル曾根と付き合っているわけでもあるまいし。さくらさんは僕と比較したら良く食べるけれど、常識外の大食らいというわけでもない。
いずれにしてもこれはチャンスだ。さくらさんは今フリーの状態。
とそんな思いで気がはやってしまったのか、僕はさくらさんの気持ちを探るために、こんなことを言った。
ひろし「いや、でも今日はありがとね。超ひさしぶりだし、来てくれると思わなかったよ。」
僕はどんな回答を求めていたのだろうか。恐らく、こうだ。
さくらさん(妄想)「ひろしさんと会うためなら、いくらでも時間を作りますよ。」
あるいは、こんな感じ。
さくらさん(妄想)「私もひろしさんに会いたかったので、嬉しいです!」
こんな返事が返って来たなら、僕は背中を押してもらえる。今後も自信を持って、さくらさんにアプローチしていける!
しかし、そんな都合の良い返答が返ってくることなど、もちろんなかった。
当たり前だ。向こうも僕のことを良いと思っていたなら、どうして1年半も僕に連絡をして来ないというのだ。
現実はこうだ。
ひろし「いや、でも今日はありがとね。超ひさしぶりだし、来てくれると思わなかったよ。」
さくらさん「いえいえ。時間もあったし全然大丈夫ですよ。奢ってもらえますし。」
さくらさん「・・・あっ!・・・言っちゃった」
おわかりいただけただろうか。
正直、さくらさんが余計な一言を発しなければ、僕も気付かなかった。
そう、さくらさんは焼肉を奢ってもらう気満々だったのだ。
僕は事前に「奢る」なんて全く伝えていない。
もちろん、さくらさんとの食事代は毎回全額支払ってきたし、今回もそうするつもりだった。
そのことに抵抗はないし、さくらさんが「奢ってもらえる」と考えていても何ら不思議はない。
でも、さくらさんの焦り方は少し引っ掛かる。
相当後ろめたい気持ちがあるから、言ってしまった後にあれ程焦っていたのではないだろうか。
そう、僕のことを「タダ飯を食わせてくれる便利な男なので利用してやろう。」という風に考えていたからこそ、その本心が漏れ出たことに慌てふためいてしまったのではないだろうか。
背中を押してもらうつもりが、まさか後ろに引っ張られることになるとは・・・。
平静を装いながらも、僕はやんわりと心にダメージを受けたのだった。
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