女子大生マネージャーさくら(6):美味いメシと不味い話
あっという間に、さくらさんとのすき焼きデートの日がやって来た。
新宿駅東口の警察署の前で待ち合わせ。
さくらさんの顔はハッキリ覚えていたので、すんなり合流でき、2人で「近江源氏」に向かった。
帝王が懸念していた「歌舞伎町」という場所のチョイスについても、さくらさんは気にしていないように見えた。少なくとも僕が読み取れる限りは。
道中、歌舞伎町のチンピラに絡まれることもなく、道に迷うこともなく、無事にお店に辿り着けた。
予約していた個室に通され、ついに宴会の幕が開けたのである。
すき焼きはめちゃくちゃ美味かった。これが近江牛というやつか。さくらさんもたくさん食べていた。なんなら、溶き卵を遠慮なくおかわりしていた。(有料)
野菜を食べさせてくれることはなかった。もちろん、僕も立派な大人なので「あーん」みたいなことを期待していたわけではないが。
しかし、会話は超絶盛り上がらなかった・・・。
話が途切れるとか、沈黙が辛いという状況にはなっていない。しかし、さくらさんが「楽しい」と感じるような話が出来たかというと、そうではない。
さくらさんも拍子抜けしていたと思う。前回あれだけ面白かった人が(実は帝王の力であって僕は本当は面白くなかった)、デートをしてみるとただの「つまらないヤツ」に成り下がっていたのだから。
これはマズイ。非常にマズイ。すき焼きは美味いが状況はマズイ。
僕の小食と気持ちの焦りから、後半はほとんどすき焼きを口にすることが出来なくなっていた。そんな僕を尻目に、さくらさんは元気にパクパクと食べていた。(スリムな体型なのに、意外に良く食べる。女子大生という若さのなせる業であろうか。)
結局、挽回することも出来ないまま、さくらさんが最後の料理を平らげて、近江源氏での食事はお開きとなった。果たしてこの食事に、2万円の価値はあったのだろうか・・・。
もちろんこのまま帰るわけにはいかない僕は、新宿駅に向かう途中、勇気を出して、あくまで平静を装ってこう言った。
ひろし「さくらさん、まだ時間ある?よかったらバーに行こうよ。」
果たして・・・。
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