女子大生マネージャーさくら(7):ガールとバー
・・・
沈黙の間漂う、恐ろしい程の緊張感。
さくらさん「・・・はい、大丈夫ですよ。」
よ、良かった~。
帝王の威光と、すき焼きの美味さが効いたのかもしれない。
まだ僕は見限られていなかった。
僕は早速、行き先を新宿駅からバーに変更する。
向かうのはもちろん、帝王が割引券をくれた、アクアリウムバーだ。
しかしこの道中、女性をバーに誘うという、普段の僕ではあり得ない行動の気恥ずかしさと、さくらさんがOKしてくれたことによる安堵感からか、つい口を滑らせてしまった。
ひろし「実は合コン帝王さんに割引券もらったんだ。」
さくらさん「帝王さん、さすがですね!」
む、しまった。余計な一言だったかもしれない。僕ではなく、帝王の評価が上がってしまった気がする。
しかも世の中には、「デートで割引券を使う」ことを嫌がる女性もいる。
「私と過ごす時間のお金を惜しむなんてガッカリ」
「クーポンなんてせこくてダサい」
個人的には、そんなことを考える女性は心底クソだと思うが、惚れた女性がそのタイプであれば、それだけで付き合うことを諦めきれないのも、残念ながら事実なのだ。
幸いさくらさんはそんなことを気にしていないように見えた。だが、割引券の話などしない方が良いのは間違いないだろう。帝王ならむしろ、1万円の会計を「2万円払った。」と言って盛ることで、女性に財力を見せつつ恩を売る方向に動くだろう。
それはさておき、バーに入ったときのさくらさんの反応は悪くなかった。
帝王が利用するだけあってアクアリウムの雰囲気がとてもおしゃれだ。ライトアップされた水槽の中を熱帯魚が泳ぐ幻想的な雰囲気。まさに女子大生が好きそう。
そしてバーテンダーが作るカクテル。大学生はあまり利用することはないだろう。さくらさんも「こんなの飲むの初めてです。」と言いながら、カクテルを数種類飲んでいた。
間違いなく雰囲気は悪くない。お店の雰囲気は・・・。
一方で、会話の方は相変わらず、盛り上がりに欠ける内容に終始してしまった。
僕は少なくとも次のデートにつなげられる話をしたい。自然な流れなしにデートに誘う度胸がなかったからだ。だが、その"自然な流れ"を作り出す話力はもっとなかった…。
結局、2時間程過ごしたバーの中で、発展性のある会話は一切出来なかった。
恋愛に関連する話と言えば、アメフト部の元カレのストーカー話ぐらいだ。(部屋に押しかけて来られたので引越ししたらしい。)
当然、次回のデートの約束を取り付けることは出来ず、なんともモヤっとした気持ちのまま、その日は解散することになったのだった。
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