ガッキー似美人教師さゆり(22):夢のない国

「私、19時に渋谷で人と会うんで。」

これがさゆりさんの返答。

・・・。

・・・・・・。


「プーさんのハニーハント」か「パレード」かの二択を迫ったところ、返って来た答えが変化球過ぎて、思考が全く追い付かない。

本当に、最初は言っている意味がわからなかった。

・ディズニーデートの日の夜に、別の人との予定を入れるのだろうか?
・仮に予定を入れたとして、当日の13時過ぎまで黙っておくものだろうか?

ディズニーの魔法は一瞬で解けた。
それまでは全ての景色が輝いて見えていたのに、一瞬で色褪せた世界になった。

花火をバックに告白するという僕の素晴らしい妄想計画も、実行に移すことが出来なくなった。

その後どうやって過ごしたかの記憶は、あまりない。

ただ、ものすごく寒かったことはよく憶えている。
2月の気温のせいだったのか、それとも、僕の心が弱っていたせいだったのか、理由はわからない。

18時頃、帰る前にディズニーのショップを覗いた。

僕は会社の人向けにお菓子を購入した。
(ディズニーデートのお膳立てをしてくれた先輩には、絶対にお土産を渡さないと。)

さゆりさんは時間をかけてあれこれ選んでいた。

お土産を購入した後、2人は舞浜駅から東京方面に向かう。

そして、ついに別れの時。

新木場駅で下車した僕たち。
ここから、僕とさゆりさんは別の路線に向かうことになる。

さゆりさんは、「もうすぐバレンタインだから、これどうぞ。」と、つい先程ディズニーショップで購入したチョコレートを渡してくれた。

これが唯一の救い。

どんな形であれ、好きな子からチョコレートを貰えるのは本当に嬉しかった。

さゆりさん「じゃあ、今日はありがとうございました!」
ひろし「こちらこそありがとう。またね。」


僕は、別の路線に向かうさゆりさんの後ろ姿を見送った。

時刻は18時45分を回っていた。

僕は知っている。

今からどう頑張っても、19時には渋谷に着けないことを・・・。


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