同僚の紹介、ゆき(5):徒労
とりあえず、水曜日のネコを口に含む。
うむ、マズイ。(ビールは苦手)
戦略として、紹介うんぬんは関係なく、飲み会を楽しもうと考えた。
僕の数少ない経験上、こういうときに一番困るのが、
「ゆきさん、どう?かわいいでしょ?」のように、感想を求められるケースだ。
ゆきさんが席を外しているときであればまだしも、
ゆきさんがいるときにこう聞かれると本当に答えに窮する。
「かわいいですね。」→仮に相手が乗り気だった場合に、話が進んでしまう可能性がある。
相手が乗り気でなくても、同僚が話を進めてしまう恐れがある。
「いや、そうでもないよ。」→言えるわけがない。
そこで僕は、極力ゆきさん個人については触れずに、
一般的な話題や同僚の話題に終始する作戦に出た。
「二人はいつから知り合いなんですか?よく飲むんですか?」
「今日は天気が悪いですね~」
「〇〇(同僚の名前)って、見かけによらず、クズな面ありますよね(笑)」
そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、会はつつがなく進行していく。
幸か不幸か、ゆきさんも僕に対して深い興味を示していないように思える。
ちなみに好きな芸能人は「とんねるずの石橋貴明」らしく、
僕とは似ても似つかない人物なので、妙に安心した。
2時間程飲んで、お店のラストオーダーに合わせて、店を出た。
僕は二人とは違う駅に向かうため、店の前で解散した。
連絡先を聞きはしなかった。
ゆきさんも、連絡先を聞いてくることはなかった。
同僚とゆきさんは小雨の降る中、僕とは反対方向に消えて行った。
帰りの道中、どんな話をしたのだろうか。
土日を挟んだ翌月曜日。
僕は精算のため、同僚に話しかけた。
(飲み代は同僚と僕とで持つことになっていた。)
同僚「1万2000円だったから、5000円で良いよ。」
僕は6000円を支払った。
同僚「そういえば、連絡先交換するの忘れてたね。教えようか?」
僕はやんわりと断った。
こうして、ゆきさんを紹介してもらうというイベントはひっそりと幕を下ろした。
・失ったもの:6000円
・得たもの:謎の徒労感
紹介してもらうって難しい。
ゆきさんに会うことも、この同僚が女性を紹介してくれることも、もう二度とないだろうな・・・。
(完)
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