女子大生マネージャーさくら(14):ガリ男が食えるのはガリだけ
目の前にずらりと並んだ「板さんおまかせにぎり」・・・。
どれもとても美味しそうな見た目だ。
だが、正直もう食べたいとは思えなくなっていた。
サイドメニューでお腹いっぱい。
ここから10貫以上のお寿司を食べるなんて、正気の沙汰とは思えない!
戸惑う僕を尻目に、さくらさんは平然とお寿司をつまんでいく。
あれ?もしかして僕の胃袋って女子以下なのだろうか・・・?
自分が少食なことはわかっていたが、それはあくまで男の中でのことだと思っていた。
それがまさか、さくらさんに負けているなんて。そうだ。思い返してみると、すき焼きデートのときも、さくらさんは僕より食べていたっけ。
いやいや。もしかしたら、さくらさんが女性の中では大食いなだけかもしれない。はたまた、好きな女の子と一緒にいる緊張感のせいで、僕が普段以上に食べられなくなってしまっているのかもしれない。
だが、そんなことを考えていても仕方がない。
今すべきことは、目の前のお寿司を片付けることだ。
残念ながら、「板さんおまかせにぎり」は2人前を注文したので、さくらさんの力を借りることは出来ない。
まずはウニに手を付けた。う、美味い・・・。
普段は好きな物を最後に残しておくタイプの僕だが、この日ばかりは最後まで辿り着ける自信がなかったので、好物から食べてしまおうと考えた。追い詰められているわりには、現金な思考回路。
続いて中トロを口に運ぶ。と、とろける・・・。
さすがは行列が出来る名店、美登里寿司。味に間違いはないようだ。
しかしこの段階で僕のお腹は限界に近い。箸休めのガリしか胃袋に入れられない。
さくらさん「どうしたんですか、箸が止まってますよ?」
(しまった!気付かれた――――――!)
このとき程、へこんだことはない。
今になって思えば、そこまで気にすることでもないと思う。
「ハハハ、素敵な女性を目の前にして食事をすると、緊張で喉を通らないね!」と爽やかに受け流す。
なんて言うことは難しいけれど、「夕方に牛丼食べたせいかな?笑」ぐらいの方便で、笑いを誘いながら受け流すことぐらいは簡単な状況なのに。
しかし、当時の僕には、「好きな女の子より全然食べられない」という状況は、穴があったら入りたいぐらいの恥ずかしさを感じるものだったのだ・・・。
(いっそ口に含んでトイレに行き、吐いてやろうか?)
そんなことさえ考えてしまった。がもちろん、そんな非道を実行する勇気はなかった。
さらに問題なのが、おなかがいっぱいでお酒すら飲めなくなっていること。
調子に乗って最初に注文した日本酒の熱燗が全然減らない。
そして、アルコールの力がないと、僕は饒舌に会話をすることが出来ない。
さくらさんのサイドメニュー爆撃により、僕は如何ともし難い苦境に陥った・・・。
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